京都・福知山のブルワリー「CRAFT BANK」が、横河電機グループと協働し、自律制御AIによる“温度設定計画”でビールの発酵工程を最適化。看板商品「BANK IPA」を題材に、336時間→240時間(28%短縮)を達成しつつ、香り・味わいの品質を維持した実証結果を公表しました。クラフトビールの「おいしさ」と「生産性」の両立に一歩踏み込むニュースです。
目次
トピックの要点(3分でわかる)

- AIが導く温度計画に従い、醸造家が手動でタンク温度をコントロール
→ 発酵工程を28%短縮(336h→240h)。品質基準は官能評価で確認。 - 対象銘柄は**「BANK IPA」**(JGA 2023銀賞)。柑橘やトロピカルを思わせるアロマが特長。
- 先にシミュレーターを構築し、現場データを活用して温度操作計画を検証。仮説を持って実機試験へ。
- 横河電機は化学・食品・医薬などでの自律制御AIの適用実績があり、発酵分野への応用拡大を示唆。
何がすごい?—ビールづくりの文脈で
- 品質とスループットの両立:発酵時間短縮は仕込み回転率の向上を意味し、小規模ブルワリーの生産安定化に直結。
- “香りも含めた品質を維持”という実証:IPAの肝であるホップアロマの保持を担保した点が大きい。
- 現場×AIの二人三脚:AIの提案を醸造家の目と鼻で検証する運用。完全自動化ではなく、職人知とAIの補完が本筋。
取り組みの流れ(実証プロセス)

- シミュレーターを構築(発酵挙動を再現)
- 自律制御AI(強化学習アルゴリズム FKDPP)が温度操作計画を策定
- 醸造責任者が妥当性をチェックし、手動で温度制御を実施
- 官能評価で品質確認 → 時間28%短縮を達成
醸造家・企業コメント(要旨)
- CRAFT BANK 羽星 大地氏:データ活用で仮想検証を繰り返し、仮説を持って実機へ。職人の経験×AIで新たな最適解が見えた。
- 横河電機(横河デジタル) 鹿子木 宏明氏:トレードオフが難しい領域にAIが効く。ドメイン知を活かし、競争力強化に寄与。
ビール好き視点のインパクト
- リリースや限定醸造の機会拡大:発酵短縮は季節モノやコラボの機動力を高める可能性。
- 味の再現性向上:AIの計画と評価データが蓄積されれば、バッチ間のブレ抑制にも期待。
- 京都発の“テック×クラフト”:地場の天然酵母・副原料への挑戦とも相性がよさそう。