牛タン焼き店などを展開する利久(宮城県岩沼市)が、クラフトビールの製造に乗り出した。本社工場の隣接地に新設した「希望の丘醸造所」で5月に仕込みをスタートさせた。東北の「牛たん炭焼 利久」各店で7月1日、アメリカンペールエールとウエストコーストインディアンペールエール(IPA)の提供を始める。今後、イチゴや「幻の果物」ポポーなど岩沼産食材、宮城県産のカキやホヤを使ったオリジナルビールも開発する方針。
岩沼、宮城産食材も活用へ
アメリカンペールエールはかんきつに似た香りで飲み口は軽く牛タン焼きに合う。ウエストコーストIPAはしっかりした飲み応え。牛タンソーセージなどと味わうのがお勧めという。
商品名はアメリカンペールエールが「ナックル 167A」、ウエストコーストIPAが「ザ・スペンサー」。それぞれ牛モモ肉の希少部位、リブロースを意味し、牛肉にちなむ。
甘めの黒ビールのポーター、宮城産ユズを使いすっきりとしたセゾン、白濁しトロピカルな風味のニューイングランドIPAも順次提供し、計5種のクラフトビールを定番とする予定だ。
アルコール度数は4・5~6・5度。350ミリリットル缶で、提供価格は税別650~700円。全国80店以上の利久での提供を目指し、小売りも計画する。
醸造所は3月末に完成した。平屋で床面積は約246平方メートル。年間140キロリットルの生産が可能で、新たに雇用した醸造経験者ら4人が製造に当たる。名称は東日本大震災からの復興の象徴でもある岩沼市の「千年希望の丘」にちなみ、商品のロゴマークに「iwanuma」の文字も入れた。
岩沼は亀井利二社長が23歳で飲食店経営を始めた地。6月28日に仙台市内であった関係者向けのお披露目会で亀井代表は「岩沼、宮城の食材をビールの形にして全国の方に飲んでもらいたい。これまで岩沼で助けていただいた恩返しをし、復興の一助にもなればという思いだ」と話した。
国内でクラフトビールは第3次ブームとされる。醸造責任者の大平洋介酒類製造1課長は「競争相手が多い市場。人気が続くよう味や香りを追求していく」と語る。