多種多様な味わいが魅力の“クラフトビール”。最近では、スーパーやコンビニでもよく見かけるようになり全国的にも人気が高まっています。北海道では、過去5年で10カ所以上のクラフトビール醸造所が新設されています。今年の夏、函館で新しくクラフトビールの醸造所を始めた男性に会いに行きました。
豊富な種類が魅力のクラフトビール
クラフトビールは、小規模な醸造所で作られるビールなどのことを指して呼ばれていて、作り手のこだわりがつまった個性豊かな味わいが特徴です。華やかな香りを際立たせたものから、苦みや酸味を利かせたものまで、様々な種類のビールがあり、味・香り・色合いの違いを楽しめるのが魅力です。
脱サラして醸造家に転身
今年7月、函館市に新しくクラフトビールの醸造所を作った石垣充清さんです。以前は市内の病院で事務の仕事をしていましたが、クラフトビールの奥深さに魅了され、醸造家を目指して2019年に脱サラ。その後、神奈川県の醸造所でビール作りを学びました。コロナ禍の影響もあり、すぐに自分の醸造所を開くことはできませんでしたが、貯金を切り崩しながら2年間オープンの準備を進め、44歳でクラフトビールの醸造所をスタートさせました。
石垣さんの醸造所は、函館山のふもとの観光エリア、西部地区にあります。レストランと併設されていて、食事と一緒に新鮮なクラフトビールを楽しむことができます。
石垣さんがビール作りでこだわっているのは、ビールの原料である麦芽の組み合わせです。大麦や小麦など10種類以上の中から選んでブレンドします。麦芽の品種や、麦芽を焙煎する工程での熱の加え方によって、出来上がるビールの味や色合いに個性が表れるといいます。
麦芽は細かく砕いて仕込み釜で茹でると、ビールの素になる麦汁ができます。その後、ビールに苦みをつけるホップを加えて冷却。最後に酵母を加えて1週間ほど発酵させます。
店では、石垣さんが手作りしたクラフトビールを常時5種類以上、楽しむことができます。
色が淡いこちらのビールがヴァイツェンというビールです。原料の麦芽の50%以上に小麦の麦芽を使用しています。まろやかな口当たりで、苦みが少ないため、ビールが苦手な人にも飲みやすいと好評だということです。
一方、こちらはインディアペールエール(IPA)。焙煎した麦芽を使うことで、コクと風味を利かせています。さらに、一般的なペールエールと比べて7倍の量のホップを加えているため、しっかりとした苦みを感じられ、飲みごたえがあります。
北海道の果物からビールを
石垣さんは今、地元の果物を取り入れたビール作りに挑戦しています。北海道でとれた素材を生かしてビールを作ることで地域を盛り上げたいと考えているのです。休日返上で、道内各地を巡り、ビールに加えるフルーツを探しています。
集めたのは、七飯町のリンゴ、厚真町のスイカ、新十津川町のフルーツホオズキ、函館でとれたイチゴなど。果物の香りをビールにつけることでビールが苦手な人でも飲みやすく作ることが狙いです。石垣さんが地元の果物を使って初めて作ったのは、函館と厚真町で採れたイチゴを使ったビールでした。
イチゴはあえて一度冷凍させて細胞壁を壊すことで、香りと風味がとけだしやすいようにしています。発酵途中のビールにつけ込み、淡くピンク色がかかったイチゴビールが完成しました。
イチゴビールを注文したお客さんからは『イチゴの香りがして飲みやすい』、『あまりビールは好きじゃないけど、これはおいしいと思う』という声が聞かれました。
石垣さんは、今後は道産のフルーツを使ったビールのほかにも、スパイスやハーブなども取り入れて新しいビール作りに挑戦し続けていきたいと話していました。
https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-nff9df29ebb72