2026年10月1日、ビール売り場が大きく変わる。「ビールが安くなる」「第三のビールが値上がりする」「チューハイも高くなる」——なんとなく聞いたことはあるけれど、正直よくわからない。そんな方のために、今回の酒税改正をできるだけわかりやすくまとめた。結論から言うと、「本物のビール」は値下がり・「第三のビールや缶チューハイ」は値上がりだ。この機会に、自分が普段飲んでいるお酒がどちらに当たるか、チェックしてみよう。
🍺 そもそも「酒税」って何?——お酒の缶には税金が入っている
コンビニで缶ビールを1本買うと、その値段の中には「酒税」という税金が含まれている。消費税とは別に、アルコール飲料に対してかかる税金だ。
この酒税の金額は、お酒の種類によって違う。これが今回の改正のカギになる。
💡 酒税の仕組みをざっくり説明すると
お酒1缶(350ml)の値段 = 製造コスト + 酒税 + 消費税 + 流通コスト + 利益
つまり酒税が安い → お酒の値段が安くなりやすいという関係がある。
だから発泡酒・第三のビールは長年「安いお酒」として売られてきた。
🔍 まず「ビール・発泡酒・第三のビール」の違いをざっくりおさらい
これが今回の改正を理解するうえで最重要ポイントだ。同じ「ビール風の飲み物」でも、使う原料によって法律上の区分が違う。
| 種類 | 特徴 | 代表的な商品例 |
|---|---|---|
| ビール | 麦芽の使用比率が50%以上。ホップ・麦芽・水を使った「本物」のビール | スーパードライ・一番搾り・黒ラベル・エビス・よなよなエール |
| 発泡酒 | 麦芽の使用比率が50%未満、またはフルーツ等の副原料を規定以上使用 | 淡麗グリーンラベル(旧来)・一部のフルーツクラフトビール |
| 第三のビール (新ジャンル) | 麦芽の代わりに大豆やえんどう豆などを使用。発泡酒にスピリッツを加えたものも | 金麦・本麒麟・GOLD STAR・のどごしゼロ(改正前) |
| チューハイ・RTD | アルコールに果汁や炭酸を混ぜた缶飲料(「その他の発泡性酒類」に分類) | ストロングゼロ・-196・ほろよい・氷結 |
💡 かんたんに覚えるコツ
缶の表示を見よう! 缶の側面に小さく「ビール」「発泡酒」「リキュール(発泡性)」と書いてある。これが法律上の区分だ。「リキュール(発泡性)」と書いてあるのが、いわゆる「第三のビール」にあたる。
📊 2026年10月1日、何がどう変わるか——税率が「全部54.25円」に一本化
今回の改正のポイントはシンプルだ。「バラバラだった税率を、ビール系飲料すべて同じにする」という改正だ。
| 種類 | 改正前(2026年9月まで) 350ml換算の酒税 | 改正後(2026年10月〜) 350ml換算の酒税 | 変化 |
|---|---|---|---|
| ビール | 63.35円 | 54.25円 | ▼ 約9.1円 減税(値下がり方向) |
| 発泡酒 | 46.99円 | 54.25円 | ▲ 約7.26円 増税(値上がり方向) |
| 第三のビール | 46.99円(2023年以降) | 54.25円 | ▲ 約7.26円 増税(値上がり方向) |
| チューハイ・RTD | 28円 | 35円 | ▲ 約7円 増税(値上がり方向) |
💡 なぜ今回こうなったの?——「節税ビール」が生んだ30年の歪みを正す
税率が違えば、当然メーカーは税金の安い商品を作ろうとする。その結果何が起きたか。
1990年代、麦芽比率を下げると税金が安くなる仕組みを使って「発泡酒」が登場。2000年代には麦芽をほぼ使わない「第三のビール」が誕生し、安さを武器に爆発的にシェアを拡大した。結果として、日本の「ビール」の市場シェアはどんどん縮小していった。
📋 財務省の見解(公式HPより)
「類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、税収中立の下、酒税改正を実施する」
つまり「税金の差が商品の優劣を決める歪んだ状態をやめよう」という趣旨だ。
この状況を是正するため、政府は2020年・2023年・2026年の3段階で段階的に税率を近づけてきた。今回がその最終段階・完結編だ。
| 時期 | 主な変更内容 |
|---|---|
| 2020年10月(第1段階) | ビールが77円→70円に値下げ、第三のビールが28円→37.8円に値上げ |
| 2023年10月(第2段階) | ビールが70円→63.35円に値下げ、第三のビールが「発泡酒」に統合され46.99円に |
| 2026年10月(第3段階・完結) | ビール・発泡酒・旧第三のビール、すべて54.25円に一本化 |
🏭 大手メーカーの対応——「第三のビール」がビールに生まれ変わる動き
税率が一本化されることで、これまで「節税」のために第三のビールとして販売していた商品をビールにリニューアルする動きが加速している。
| メーカー | 主な動き |
|---|---|
| サントリー | 「金麦」を2026年10月よりビールにリニューアル。店頭想定価格は197円→206円程度(ビール化後も同価格帯で展開)。RTD「-196無糖」など121品目値上げ |
| サッポロ | 「GOLD STAR」「麦とホップ」を第三のビールからビールに仕様変更。RTD「濃いめのレモンサワー」など26品目値上げ |
| アサヒ | ビールは減税分を価格に反映(値下げ方向)。発泡酒・新ジャンル・RTDは増税分を反映(値上げ)。2026年4月に新ビール「アサヒ ゴールド」を先行投入 |
| キリン | 「本麒麟」をビールにリニューアル。10月に酒税改正分を反映した価格改定を実施 |
🏠 クラフトビールへの影響——「値下がり」が多いが、要注意な銘柄も
クラフトビールを愛するみなさんが最も気になるのがここだ。
✅ 「ビール区分」のクラフトビール → 値下がり方向
よなよなエール・インドの青鬼・水曜日のネコなど、麦芽をたっぷり使った正統派クラフトビールのほとんどは「ビール」区分だ。今回の改正で減税になるため、値下がり方向に動く。
実際、ヤッホーブルーイングは「よなよなエール(缶)」の希望小売価格を税抜きで9円引き下げると発表している。
📢 ヤッホーブルーイング代表・井手直行(てんちょ)の見解
「スーパーやコンビニの店頭で『大手ビール』と『クラフトビール』が同じ『ビール』という土俵で並ぶことになります。これまで価格差という壁があったクラフトビールが、より選ばれやすくなる転換点だと考えています。過去30年間、日本のビール市場は『安さ』を追求した歴史でしたが、これからは味わいや付加価値で選ばれる時代になるはずです。」(要旨)
⚠️ 「発泡酒区分」のクラフトビール → 値上がり方向(要注意)
クラフトビールの中には、フルーツやスパイスを多量に使う銘柄もある。副原料の使用量が麦芽重量の5%を超えると、法律上「発泡酒」に分類される。この場合は今回の改正で増税側になるため注意が必要だ。
⚠️ 愛飲中のクラフトビールの区分を確認しよう
缶やボトルの表示を見てみよう。
・「ビール」と書いてある → 今回の改正で減税・値下がり方向
・「発泡酒」と書いてある → 今回の改正で増税・値上がり方向
フルーツビール・ハーブビールなど副原料を多用するスタイルは発泡酒区分になっている場合がある。銘柄ごとにメーカーの公式サイトでも確認できる。
🥤 チューハイ・RTD(缶サワーなど)は「7円増税」で値上がり必至
ビールとは別の区分である「その他の発泡性酒類」(チューハイ・缶サワーなど)も今回の改正で増税される。350mlあたり28円→35円と約7円の増税だ。
アサヒ・サントリー・サッポロなど各社がすでに10月から値上げを発表しており、普段チューハイをよく飲む方は財布への影響を意識しておきたい。
🌟 クラフトビールファンにとって、これは「追い風」だ
今回の改正をクラフトビール視点で見ると、実は大きなチャンスが生まれている。
🌟 クラフトビールにとってのプラス効果
- 大手ビールとの価格差が縮まる:これまで「クラフトビールは高い」と感じていた理由のひとつは税制上の格差。その格差がなくなることで、比較対象が価格から「味」に移る
- 「ビール」という同じ棚に並ぶ:スーパー・コンビニで第三のビールがなくなる分、ビール棚のラインナップが増える。クラフトビールの露出機会が広がる
- 「安さで選ぶ時代」の終わり:消費者が価格だけでなく味・ブランド・ストーリーで選ぶようになる。これはクラフトビールの本来の強みが活きる環境だ
🍺 まとめ——自分のお酒が「値上がり」か「値下がり」か、缶の表示で確認しよう
| 飲み物の種類 | 缶の表示 | 10月以降の方向 |
|---|---|---|
| スーパードライ・一番搾り・黒ラベルなど | ビール | ▼ 値下がり方向 |
| よなよなエール・インドの青鬼など(多くのクラフトビール) | ビール | ▼ 値下がり方向 |
| フルーツ多用のクラフトビール(一部) | 発泡酒 | ▲ 値上がり方向 |
| 金麦・本麒麟・GOLD STAR(10月以降ビール化) | 10月以降:ビール | ビール化するが価格帯は据え置き傾向 |
| ストロングゼロ・-196・ほろよいなど缶チューハイ | リキュール(発泡性) | ▲ 値上がり方向 |
「値下がりするから本物のビールをもっと楽しもう」「価格差が縮まったなら、クラフトビールにも挑戦してみよう」——そんな発見のきっかけとして、今回の酒税改正を捉えてほしい。
30年かけて生まれた「節税ビール」の時代が終わり、日本のビール文化が本来の姿に戻っていく。ビアなびとしては、この変化をポジティブに歓迎したい。

