【郷田まみ通信員】ブエノスアイレスの和食・アジアンフードレストランをはじめ、市内のビアホールで近年注目を浴び始めているビールがある。「煌(きら)/KIRA」。日系スタイルのクラフトビールだ。沖縄県系2世の崎原フアンさん(56)が2014年に立ち上げたビールブランドだ。
若い頃はF1レーサーを夢見ていたという崎原さん。1990年代には日本への出稼ぎでためた貯金でイタリアにたち、レース経験を重ねて、帰国後はブラジルのF3(フォーミュラ3)を走るまでに至った。
レースカーを降り、その後は大手外資企業に勤務したが、その一方でビール好きが高じて同市郊外の自宅の台所でビール造りを始めた。クラフトビール造りに専念するため、23年間勤務した企業を2016年に退社。自宅にタンクを設置し、自分が納得のいくクラフトビールを夢に描き、試行錯誤を重ねた。その結果、日系スタイルのクラフトビールを生み出した。
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)という困難を乗り越え、現在では市内の工場で1カ月に2万リットルを製造。缶ビールの種類は全部で7種で、名前は全て日本にちなんだものだ。HARUKI、AKAI、NAOKI、SORA、OKINAWA、RONIN、TAKESHI。
崎原さんは南米ビールコンクールでは、KIRAと名付ける前の11年にブランド名・シクストフェルで出したシクストフェル・スカーレットで表彰を受けている。熟成過程にオレンジピールとコショウを加えたビールだ。14年もシクストフェル・オートミール(黒ビール)で金メダルを受賞した。
さらに18年のアルゼンチンビールコンクールでは、煌/KIRAのHARUKIでブロンズメダルを獲得している。
ちなみに、崎原さんの父親はアルゼンチンで唯一の邦字紙「らぷらた報知」で長きにわたって記者を務め、沖縄タイムス通信員でもあった崎原朝一さんだ。生前の朝一さんは時々、息子が試作中のクラフトビールを新聞社の事務所に差し入れていた。