縮小が続くビール市場とは裏腹に、素材や製法など個性を追求した「クラフトビール」が人気だ。クラフトビールの国内市場は7年間で約2倍に拡大し、中でもヒット銘柄と注目されているのが令和3年3月にキリンビールが発売したクラフトビール「スプリングバレー豊潤<496>」。同社は大阪・梅田での期間限定ビアガーデンでも訴求し、クラフトビール市場を外食シーンにも広げたい考えだ。
同社はJR大阪駅北側の大型複合施設内にある「うめきた広場」で期間限定のビアガーデンを開く。平成25年以来、毎年この場所で営業し、令和2年からはクラフトビールを訴求。今月28日から10月30日の今季は、昨年に続きクラフトビールの主力に位置付ける「スプリングバレー」を始め、12銘柄以上のクラフトビールを用意する。
「スプリングバレー」は今春にリニューアル。苦みと香りのバランスを極めた独自製法はそのままに、素材のホップを4種から5種に増やし、新たに日本産を採用して「飲み飽きない味わいに進化させた」(同社の田山智広・マスターブリュワー)。
「クラフトビール」と聞き、思い浮かぶのは「地ビール」だが「どちらも同じようなもので、明確な定義はない」(業界関係者)という。平成6年の酒税法改正でビールの製造免許に必要な最低製造量が引き下げられたことから全国各地で作られるようになった地ビールは、値段が高い割に低品質なものも多く、ブームは一時去った。
その後、1990年代から米国で手づくりに重きを置いたクラフトビールが増えてきた後、日本でも個性や品質を高めたクラフトビールとして市場が広がってきた。
「良いものを飲みたいというニーズの変化をチャンスとしたい」。キリンビールの石塚浩樹・執行役員近畿圏統括本部長は、広がりを見せるクラフトビール市場のさらなる成長に意欲を見せた。どれも同じような味という「同質化」が衰退の一因とされるビール市場に、クラフトビールが風穴を開けられるか注目が集まっている。(田村慶子)