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目標は「体調が悪い時も飲めるワイン」 女性醸造家の挑戦

結婚を機に移り住んだ徳島県三好市池田町で2021年夏、徳島で初となるワイン醸造所「Natan(なたん)葡萄酒醸造所」を構えた井下奈未香(なみか)さん(39)。22年3月からは自社ワインを販売する店舗も同じ敷地にオープン。同市で開墾した畑で育てたブドウをはじめ、岩手や香川などのブドウも使い17種のワインを製造する。「目標は、体調が悪い時も飲めるワイン。おばあちゃんの卵酒のように、飲んで体を温めて、次の日は元気になれるような優しいワインを作りたい」

井下奈未香さん=徳島県三好市池田町で、2022年3月15日午後3時55分、国本ようこ撮影井下奈未香さん=徳島県三好市池田町で、2022年3月15日午後3時55分、国本ようこ撮影

25歳まで専業主婦だったが、離婚。娘2人を育てながら仕事を探していた頃、当時住んでいた奈良市の小さなワインバーで、人生を変えるワインと出会った。イタリア・プーリア州産の赤ワインで「ブドウそのものを口にしたようなジューシーさがあり、衝撃を受けた」。その場で「ここで働かせてください」と頼み込み、即採用。「その時にワインに取りつかれたのかも」と笑う。

半年間の猛勉強でソムリエ資格を取得。ブドウをよく知るために大阪府内の醸造所や畑にも通い、5年ほど勉強を重ねた。その頃見学した滋賀のワイナリーで、醸造家が「のろけのように」うれしそうに製造工程を説明する姿を見て、激しく嫉妬心を感じた。「自分もワインと一心同体になりたい。死ぬ日までワインといたい」との思いが高まり、醸造家になろうと決めた。

修業先に考えたのは、イタリア・トスカーナ州にある「ブリケッラ農園」。生きづらさを抱える青少年を受け入れる農園で、興味を持った。イタリア移住も考えたが、ちょうど三好市出身の夫との結婚話が持ち上がる。「徳島でゼロからやればいいか」。14年、移住に踏み切った。

耕作放棄地を開墾した6アールの小さな畑に16年、「ヤマソーヴィニヨン」を植樹。翌年の収穫で10本のワインが完成した。18年からは大阪の醸造所に委託してワイン造りを本格化させ、21年8月に念願のワイナリーを設立した。現在は三好市の7カ所の畑で11種約950本のブドウを育てる。今後も拡充予定だ。「ゆくゆくは、自社や四国内のブドウだけでワインを作りたい」

一方で、ブリケッラ農園のような活動を「人生の集大成にしたい」と考える。その皮切りに、女性を支援する自立支援施設の設立を考えている。17年からは京都橘大学の通信教育課程で心理学を学び、準備を進める。「農作業を一緒にして、心を休めて歩き出せる場所を作りたい」。その目が見据える未来はまだまだ広がっている。【国本ようこ】

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