自転車で日本一周した旅人が造り出す、地元の味のビールとは

自転車で日本一周した旅人が造り出す、地元の味のビールとは
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北海道士別市。道立自然公園「天塩岳」をはじめとする山々や、北海道第2の大河「天塩川」の源流域を有する豊なまちです。特産としては、顔が黒い羊…「サフォーク羊」の生産が盛ん。そんなこのまちを盛り上げるべく、有志たちが集まり、ひとつの会社を立ち上げました。

その名も「志BETS(しべつ)ホールディングス」 。
2020年6月3日、熱い熱い想いと共に設立されたこの会社では、「ビール事業」「野球事業」「温泉事業」の3つを柱としています。

目次

熱い志持つメンバーが士別に集結!

この会社を立ち上げよう!と言い出したのは、士別市出身で、ご実家はこのまちで農家を営み、スープカレーのお店「Rojiura Curry SAMURAI.」を創業した川端昌志さん。 (SAMURAIについての記事はこちらをご覧ください→スプーンひとさじに込められた、地元への想い。

「士別で新しいコトにチャレンジする文化を創る」を目標に、メンバーは土建業、飲食業、農家など、さまざまな業種で働く面々が集まりました。みんなの想いはただひとつ、「地域を盛り上げたい」という、熱い想い。

北海道には、「士別(しべつ)」と「標津(しべつ)」という読み方が同じ地名があり、区別するためにも「武士」の「士」がついた士別が「侍しべつ」と呼ばれているのです。

北海道には、「士別(しべつ)」と「標津(しべつ)」という読み方が同じ地名があり、区別するためにも「武士」の「士」がついた士別が「侍しべつ」と呼ばれているのです。

まずは志BETSホールディングスの事業について少し触れてみたいと思います。

2021年には1つ目の事業として、スポーツのチカラで地域を盛り上げるコトを目的に、北海道独立リーグ球団「士別サムライブレイズ」を立ち上げました。

もともと、会社メンバーのひとりイトイ産業の代表(※)が、会社でスキーチームを抱えるほどの大のスポーツ好き。(士別は雪も多く、それを活かして、スキーのジャンプ台もあるのだとか)こうして、「スポーツを頑張る若者を応援したい」というところから、野球の独立リーグチームを持つことになったのです。

※…イトイさんのくらしごと記事はこちら→田舎でもこれだけやれる!地方創生企業! イトイグループHD

士別サムライブレイズは、ドラフトを行い選手を集めました。

もともと士別とは縁もゆかりもない選手たちがこのまちに集まり、働きながらプロ野球を目指して日々練習に勤しみます。そんな夢に向かって走り続けている若者の、住まいや就業先もしっかりサポート。イトイ産業が持つ寮に住んだり、就業先は、イトイ産業をはじめ、市内の農家や、志BETSホールディングスが指定管理で運営しているまちの温泉施設などを紹介しています。

もしかたしたら、士別のまちを歩いていると野球選手と遭遇…!なんてことがあるのかもしれませんね。これらの事業を通じて、士別に若者の人口も、働き手も増やし、まちの活力を増やしている志BETSホールディングスです。

続いて、今回のメインテーマともなる「ビール事業」についてもお話していこうと思います。

ビールをつくろと思ったきっかけ

2022年4月にクラウドファンディングを経てリリースした、クラフトビールについてです。そもそもなぜクラフトビールを造ろうと思ったのか…!というと、会社のメンバーがみんなビールが好きだから!…というのも、ひとつの理由のようですが(笑)、かつて農業倉庫として使われていた築93年の石蔵を見たとき、ここでビールを造ったらかっこいいのでは?とメンバー内で話が出たそう。

「天塩川の源流水と地元の農産物を使ったクラフトビールを絶対につくりたい」

メンバーによるその熱い想いによって、ビール事業の構想がスタートしました。

こちらがその石蔵です。士別駅から徒歩3分ほど

こちらがその石蔵です。士別駅から徒歩3分ほど

志BETSホールディングスの3つの柱の事業は「野球」「温泉」「ビール」だと冒頭でもお伝えしましたが、温泉に入って、お風呂あがりに飲むビールの一杯や、野球を観戦しながら飲むビール…違う事業のようで、実は繋がりを見出しています。

しかし、自分たちのビールを造ろうと動き出したとは言え、どうやってビールを造っていけばいいのか…?そこで登場したのが、醸造家の風間健さんです。

これまで旅するように生きてきた風間さんについてご紹介します。

自転車で日本一周する元パティシエ

2021年8月より、この志BETSホールディングスでビールの醸造を担当することになった風間健さん。北海道上川エリアにあり、士別よりも北側に位置する名寄市出身です。

こちらが風間さんです。

こちらが風間さんです。

高校を卒業後上京し、パティシエを志し、専門学校にて製菓を学びます。 その後そ札幌のケーキ屋さんに就職。

もともと「色々な人に出会いたい!」と、アクティブな性格の風間さんにとって、ケーキ屋さんでの長時間労働の生活に、悶々とした気持ちを抱えていたそう。

「このままではダメだ」そう思い、退職を決意します。

その後、ご縁があり25歳の時に東京の不動産会社に就職。
ある日そこの職場の方に、クラフトビールのお店に連れて行ってもらったのが、今日までを物語るすべての始まりでした。

「人生で初めてクラフトビールを飲んだ時は、こんなにもフルーティーなビールがあったんだってビックリしたんです。実はもともとビールはそんなに好きな方ではなくて。ビールって、がぶがぶ飲むってイメージだったんですけど、そうではくて、ゆっくりと、嗜みながら飲むビールがあるんだって感動しました」

さらに、そこのお店でたまたま隣に座っていた方が、「来月、横浜でクラフトビールのイベントがあるから一緒に行くかい?」と声をかけてくれたそう。人との出会いが大好きな風間さんは、ぜひ!と、その方とイベントへと足を運びました。

イベントに訪れ、ビールの種類の多さに驚いた風間さん。いくつもの飲み比べを楽しみ、これをきっかけに、クラフトビールの魅力にハマっていきました。そしてその後、風間さんは自転車で日本一周の旅に出ます。

「行きたいブルワリーをとにかく巡る旅に出ました。今はとにかく自分がやりたいと思ったことをとにかくやりまくって、もしまたケーキの道に戻りたいと思ったら戻ろう、そう思って旅をしていたんです」

「でも戻ることはなかったですね(笑)」と笑う風間さん。

「でも戻ることはなかったですね(笑)」と笑う風間さん。

日本一周しながらブルワリーを巡る様子をSNSで発信し続けていたといいます。

すると北海道美深町にある、クラフトビールを造っている会社の社長の目に止まり「うちで、作り手にならないか?」と声をかけてもらったのが、風間さんがビール職人としての人生を歩む始まり。

こうして2019年の4月より、風間さんは美深町でビールの作り手となりました。

その後、「士別で自分たちのクラフトビールを造るぞ!」と、川端さんたちが美深のビール工場に視察に訪れたのです。その時の様子を、鮮明に覚えている様子でした。

「川端さんは、エネルギーがすごい人で、人を引きつける力があるなと思いました。イトイ産業の菅原さんや、士別にあるSAMURAIふる里店の店長、長岡さんも、みんなアクティブな人たちだった」

会社メンバーの長岡さんと談笑中。長岡さんの記事はこちら→スプーンひとさじに込められた、地元への想い。

会社メンバーの長岡さんと談笑中。長岡さんの記事はこちら→スプーンひとさじに込められた、地元への想い。

そんな川端さんたちからのお声がけもあり、もともと0から1をつくることに興味もあったということも相まって、2020年に美深のビール工場を退社し、士別のビール工場立ち上げに関わることを決意。

「正直、働く場所はどこでも良くて、大事なのは一緒に働く『人』。東京にも住んで、日本も一周して、色んなところを見てきたけど、田舎に来てみると、実は活動的な人が多いんだなっていうことが分かりました」

川端さんを始め、こうして自分たちのまちを盛り上げようと頑張っている人たちがいる。「士別は熱いまちだと思います」と話してくれました。

実は風間さん、昼はビール職人として働き、夜は地元名寄で自分のビアバーを経営。車文化のエリアだからこそ、自分がつくったビールを地元の人にも飲んでもらいたいとお店をつくり、二足のわらじを履くことに。

自分がつくったクラフトビールを置くそのお店の名前は「モルトリップ」。ビールに使われている麦芽(モルト)と、自分自身が旅をしていたというところから「トリップ」を掛け合わせているのだとか。出来れば道北まで、ビールを求めて旅をしてきて欲しい、そんな想いが込められているそうです。

サムライビール、ここに誕生

こうして風間さんたちの手によって生まれた士別サムライビール。

実は、クラウドファンディングで資金を集めました。石蔵をビール工場にすべくフルリノベーションをする費用や、事業開始時にかかる様々な費用を捻出すべく始めたこのクラウドファンディングは、目標200万に対し、522万もの資金が集まり、見事達成。

色んな方の応援があったからこそ士別サムライブルワリーというビール工場が出来、無事に商品も誕生。ここからクラフトビールのある風土が広がっていく未来が、想像できます。

これが3種類のビール

これが3種類のビール

  • 「煌(こう)」:柑橘系の爽やかな香りとすっきりとした味わいの『ゴールデンエール』
  • 「雅(みやび)」:ホップの香りが際立つトロピカルフレーバーな『IPA』
  • 「寵(ちょう)」:まろやかで優しい口当たりの『ウィートエール』

という3種類が誕生しました。

これらのビールは、全国に20店舗以上展開している、SAMURAIスープカレーの店舗でも飲めるようにするとのことで、士別のビールが地元を飛び出し、道北のPRをしていく機会になりそうです。

「SAMURAIの店舗でも飲めるようにする、それはつまり、クラフトビールを飲んだことがない人もそこにはたくさんいるからこそ、初めての人にも飲みやすいものを、というところを意識して造っています。そして、『いつものビールとちゃんと味が違う』というところも、分かりやすく伝えていきたいですね。癖はそんなに出ないようにして…って、言っても作り手としては、チャレンジングなものをつくりたいって気持ちにもなっちゃいますが(笑)」と笑う風間さんです。

販売は2022年4月1日からスタート。道の駅での販売を皮切りに、これからどんどん外へと出ていこうとしています。

また、「まちに還元したい」という想いも強いことから、聞けばSDGs的役割も…

「ビールの原材料である麦芽は、一般的に廃棄になるんですが、士別でサフォーク羊を育てているしずお農場さんの羊の餌にしてもらったりしているんです。こうやって士別を駆使できるのが、このまちの特徴かもしれません」

志BETS(しべつ)ホールディングスが目指すもの

取材時、風間さんのことを優しく横で見守っていた、士別のSAMURAIふる里店の店長、長岡さんにも、志BETSホールディングスの一員としてこんな話をしてくださいました。

「この会社は行政のできないところをやってやろうぜ〜という想いでやってるんだよね。このまちに魅力がないからこそ、出ていく人が多いっていうのも分かる。だからこそ、応援したいって思う。それに、士別のまわりのまちは、もっともっとまちを盛り上げようと動いている。地方を盛り上げたい、ただそれだけの想いでしかないんだよ」

若い子たちが元気に楽しめるまちにしたい、そう言う人たちがまだまだ士別にはいるからこそ、これからの未来が楽しみです。

「俺はガヤ担当だよ(笑)」 と笑う長岡さん

「俺はガヤ担当だよ(笑)」 と笑う長岡さん

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