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Far Yeast Brewing(山梨県小菅村) ビールの多様性と豊かさを

東京都渋谷区から令和2年に山梨県小菅村へ、本社を移転してきたビールメーカー「Far Yeast Brewing(ファーイーストブルーイング)」は、国内のビールコンテストで優勝するなど、クラフトビール界で存在感を発揮している。山梨県産の梨を使った「Peach Haze」は、予約だけで完売するなど人気は上々だ。「ビールの多様性と豊かさを取り戻す」という同社のミッションを加速すると同時に、新醸造所計画で増産も進めようとしている。

醸造所で商品を持つ山田司朗社長=山梨県小菅村(平尾孝撮影)醸造所で商品を持つ山田司朗社長=山梨県小菅村(平尾孝撮影)

創業者でもある山田司朗社長(46)は、ビール業界とは縁もない異色の経歴だ。ベンチャーキャピタル出身で、IT企業の経営企画などを担当。ビール造りを意識し始めたのは、平成17年に経営学修士(MBA)取得のための英ケンブリッジへの留学中だった。

英国だけでなく、休日にドイツやベルギーなどを旅行し、その旅先で小規模なビールの醸造所、マイクロブルワリーがあり、その土地土地でそれぞれの味わいを実感した。「ビールは大工場で大量生産するものだと思ってきただけに、大きなカルチャーショックを受けた」と話す。

さらに、事業に成功した後に、インド料理にあうビールの醸造所を立ち上げた留学先の卒業生と知り合い、話を聞くうちに「自分もやってみたいし、自分でもできるはず」と思いを強めていった。

18年の帰国後、大手企業で経営企画などを担当していたが、その間にも、国内のクラフトビールの関係者のコミュニティーやネットワークに参加し、関係を深めてきた。自分が造るビールのイメージを強めていき、23年に独立し、ビールの世界に飛び込んだ。

まず、「和食に合う和の文化を体現するビール」を手掛けた。「日本食は海外では高級と位置付けられ、それに見合う特別なビールが必要だ」と、サンショウやユズといった和のハーブを使った「馨和(KAGUA)」を初の商品として手掛けた。この時点では生産は外部に委託するファブレス方式だったが、これが全日空のファーストクラスのビールに採用されたほか、百貨店大手の松屋が催事用で取り扱うなどしたことで、ギフト市場などで販売を伸ばし、会社を軌道にのせた。

さらに、29年に小菅村の空き工場に設備を導入し、ビール醸造を開始し、本格的なクラフトビールメーカーとして船出した。

現在製造するのはKAGUAと「Far Yeast東京シリーズ」など定番が4品種と、年間約40アイテムの限定品だ。「クラフトのファンは常に新しいものを探し、同じものはあまり選ばない」(山田氏)ため、限定品が多くなり、品種が増えている。予約時点で、完売する商品も多く、年間500キロリットルの現在の生産態勢では追い付かず、設備を一部改良、増強して同600キロリットルに引き上げた。

それでも供給が間に合わないため、新しい醸造所計画を進めている。すでに、現在の本社からほど近い村内で用地を確保した。将来的には新醸造所には、タップルーム(工場内バー)を設置し、出来立てのビールを楽しめるコーナーも予定し、クラフトビールや同社のファンが、ビールの多様性を実感できる施設にしていく考えだ。(平尾孝)

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