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1杯1000円のビールがなぜ売れるのか⁉︎ クラフトビール大人気の3つの理由

コンビニやスーパーで1本200円以下で缶ビールが買える時代に、1本1000円もするクラフトビールの売上が好調といわれている。なかには1本1000円超のビールが発売と同時に売切れなんてこともよくある。一体なぜ? クラフトビールの人気の謎をひもとくと、そこには3つの理由があった。

日本の大手ビールのほとんどはピルスナー、クラフトビールは多種多彩!

5月。ビールの美味しい季節がやってきた。でも、コロナ禍での自粛ムードを一掃するのにはもう少し時間がかかりそう。だからなのか、こんなご時世こそ値段はちょっと高いけど、たまには奮発してクラフトビ-ルを買っちゃおう、なんて人が増えている。日本ビアジャーナリスト協会代表の藤原ヒロユキさん、どうして今、クラフトビールが人気なのでしょうか。

「クラフトビールの最大の魅力は“選べる楽しさ”にあると思います」

まず最初に、「選べる楽しさ」。つまり、その味の多彩さに人気の秘密があるという。クラフトビールには「ビールって苦くて飲めない」という人でも美味しく飲める、桃やグレープフルーツ味のフルーティーなビールがあったり、フレーバーを楽しめるコーヒーやサワーテイストのビールがあったりする。そうした選べる種類の豊富さが最大の魅力になっている。

マンゴー、ブルーベリー、いちご、パイナップル、ピーチ、チェリー、グレープフルーツマンゴー、ブルーベリー、いちご、パイナップル、ピーチ、チェリー、グレープフルーツ

「これまで大手ビール会社のビールは画一的だったといえます。というのも、『一番搾り』『黒ラベル』『ザ・プレミアム・モルツ』『スーパードライ』など銘柄は数多くありますがそのほとんどがラガー(下面発酵ビール)のピルスナーと呼ばれる同じ種類に属しています。ビールのスタイルは100種類以上あるにもかかわらず、大手のビールのほとんどは同じスタイルなのです」

ビールには100種類以上のスタイルがある 図版/『ビールはゆっくり飲みなさい』(藤原ヒロユキ・日経出版社)より再構成ビールには100種類以上のスタイルがある
図版/『ビールはゆっくり飲みなさい』(藤原ヒロユキ・日経出版社)より再構成

もちろん、大手のビールは研究を重ねて造られていて、安定して美味しいといった魅力がある。しかし、クラフトビールには様々な個性がある。無数にある個性の中から自分のお気に入りを見つけて応援する“推し活”の要素があるという。

「たとえば、大手ビールを超人気アイドルだとすると、クラフトビールは個性派ミュージシャンや地下アイドルのようなものですね。他とは違った音楽性や先取り感を楽しむ魅力があると思います」

その推し活を支えているのが「SNS」によるブルワリー(醸造所)からの発信にある。藤原さんは2つ目の魅力として、SNSを通じて造り手の顔が見えることを挙げている。

ラズベリーパイナップルレモンココナッツアイスクリームJ.R.E.A.Mハイドラ―使用ビールラズベリーパイナップルレモンココナッツアイスクリームJ.R.E.A.Mハイドラ―使用ビール

クラフトビールはモテるビール!!?

「多くのブルワリーが、SNSを利用して何かしらの情報を発信しているんです。それぞれの造り手の顔が見えることで推しを応援するきっかけになっていると考えられます」

大手のビールは生産者の顔が見えてくることはあまりなく、思い浮かぶ顔といえば、各ビールのCMに起用されるタレントの場合が多い。一方でクラフトビールは、ビールの仕込みや流通にいたるまで日々の過程を見ることができる。

「SNSで見ていた推しのブルワリーが出店しているビアフェスティバルなどに行けば、推しのブルワー(醸造家)に会いに行って飲めますし、推しのブルワリーが新作ビールを販売したら、全国のお店や通販で買って飲めます。ある種のアイドルやアーティストのような側面ができています」

その人気を裏づけるように、日本国内のブルワリー数は飛躍的に増えている。2010年には全国で約180か所しかなかったが、2016年頃から一気に増え、2020年には約440か所。2022年現在では580か所を超えている。こうした急増するブルワーには20~30代が多く、若い造り手が増えていることも特徴となっている。

「SNSを通じてブルワリー同士が情報交換をしたり、世界中の最新情報も容易く入手できるようになりました。そうしたことで新規参入がしやすくなり、業界の活性化につながっているんだと思います」

クラフトビール発祥の地、アメリカの西海岸では遊び心にあふれたクリエイティブなエリアとしても有名である。そんな地域で誕生した文化だからこそ、缶やラベルのデザインのファッションセンスや味の面白さといった「遊び心」も人気の秘訣となっている。

「クラフトビールの楽しみ方はCDやレコードなど音源をディグる(掘る)行為と似ている気がします」

そう話すのは、クラフトビール漫画『よりみちエール』の著者で漫画家の敦森蘭氏。

「缶や瓶のラベルがお洒落なデザインのものが多くて、レコードのようにジャケ買いしてみたり、コレクションして部屋に飾ってみたり。またシチュエーションや気分に合わせて音楽を聴くように、その日の気分に合わせたものを飲んだりする楽しさがあります」

安くて美味しいビールは確かにある。でも、クラフトビールには美味しさだけでなく、楽しさもある。「このかっこいい缶のデザインのビールはどんな味だろう?」「この変な名前のビールはどんな味だろう?」想像するだけでも楽しさがふくらむ。そのなかのひとつに敦森氏がこんな妄想をしていた。

「ビール、焼酎、ワイン、日本酒、ウイスキー・・・お酒を擬人化させて合コンさせたら一番クラフトビールがモテそうじゃないですか。いい意味で親しみやすいチャラさがあると思います(笑)」

こんなほろ酔い加減の想像がでてくるのもクラフトビールを飲む楽しさのひとつかもしれない。

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クラフトビール編集部
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