福島市と宮城県気仙沼市の醸造所が今夏、共同で福島市産のモモを使ったクラフトビール「スクイージーピーチ」を開発した。モモのジューシーな味わいとポップな見た目が若者や外国人を引きつけ、人気を集めている。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に進む両市の醸造所がタッグを組み「ビールで東北を元気にしたい」と意気込む。
醸造所は、福島市の農家「カトウファーム」が営む「イエロービアーワークス」(YBW)と、気仙沼市の「ブラック・タイド・ブルーイング」(BTB)。福島市内の農家6軒が育てたモモ「あかつき」と「白鳳(はくほう)」を使う。原発事故による風評被害を払拭(ふっしょく)し、販売拡大を図る福島の果樹農家を支援する狙いもある。
NHK連続テレビ小説「エール」(2020年)、「おかえりモネ」(放映中)の舞台になった両市の連携を機に、福島市観光コンベンション協会が企画。東北各地で飲食店を展開する「トレジオン」(東京)の関係者が両醸造所をつないだ。
クラフトビールはそれぞれの醸造所が手掛けた2種類。果汁の割合などの作り方は同じだが、使うたるの大きさが影響し風味が異なり、飲み比べを楽しめる。
350ミリリットル缶(715円)を計約1860本生産し、各地の物産館などで8、9月に販売。数日のうちに完売したという。現在は主に両醸造所やトレジオン運営店で数量限定で飲める。
YBWは原発事故で大きな被害を受けた南相馬市で農業の復興支援に取り組んできた。大震災で被災した気仙沼市の醸造所と手を組むことに意義を見いだすYBW代表の加藤晃司さん(41)は「BTBに助言をもらいながら開発することができた。商品で東北をもっと盛り上げることができたらうれしい」と話す。
連絡先はYBW、070(5098)4439。