和歌山高専は、和歌山市の和歌山ブルワリー(吉田友之社長)と協働で、日高川町鐘巻の道成寺にある入相桜(いりあいざくら)の酵母を使ったクラフトビール「道成寺桜」の開発を進めている。すでにアルコールの醸造能力を確認し、学生2人が同社の工場で醸造しており、近く試作品が完成予定。販売開始は4月下旬を目指しており、日高地方初のクラフトビールとして、新たな名物の誕生が期待される。
和歌山高専からは生物応用化学科の楠部真崇准教授(44)が指導し、エコシステム工学専攻新2年の溝口裕太さん(日高川町)、生物応用化学科新5年の岸田悠佑さん、木脇蓮也さん(いずれも和歌山市)の3人が参加。同校では2015年に地元の団体とともに道成寺の入相桜の酵母を使った日本酒をつくっており、今回はその酵母を使うとともに、溝口さんが南紀熊野ジオパークの助成を受けて那智勝浦町にある県林業試験場のクマノザクラから取得した酵母の2種類を使用。アルコールの醸造能力を調べるなどの研究を進める中、和歌山ブルワリーから声がかかり、クラフトビールを開発することになった。
また、ビール醸造の工程やビジネスへの展開方法なども学習に生かそうと、同社とインターンシップ契約(1年間)を締結し、学生2人が同社での醸造に参加。3月中に計1500㍑の醸造を始めており、4月中旬には完成する見通しとなっている。
開発したビールは同社のクラフトビール「AGARA CRAFT」のシリーズとして発売され、入相桜は「道成寺桜」、クマノザクラは「クマノザクラ」の名前がつけられる。販売は活動に賛同している株式会社オークワが手掛け、4月下旬に店舗に並ぶ見通しとなっている。
学生たちは「名所の桜の魅力を瓶に封じ込めたい」、楠部准教授は「コロナで閉塞感が強い中、明るい話題を提供し、地域に還元できれば」と話している。