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「ビール醸造は農業」、造り手で選ぶクラフトビールの楽しみ

日本には、その土地の気候風土に根差した個性豊かな食材がたくさんあり、その裏には、必ずそれに携わった作り手がいます。私は、農林水産省で働きつつ、休日はそのおいしさの源である産地へ出向き、作り手の声に耳を傾けた上で、その食材を料理し、伝えることをライフワークとしています。この連載では、まだまだ知られていないおいしい食材を一つひとつひもときながら、レシピと共にお伝えします。

第9回のテーマは「クラフトビール」。

クラフトビールに明確な定義はありませんが、一般的には「小規模な醸造所で職人が丁寧に造り上げたビール」を指します。

はじまりは1994年の酒税法改正により「最低製造量基準」が2000キロリットルから60キロリットルに引き下げられたこと。それまでは大きな事業者しかビールの製造免許を取得できませんでしたが、小さな事業者にもビール醸造の門が開かれたのです。小さな醸造所=マイクロブルワリーは年々増え、今や500を超えたそう。それぞれに個性を打ち出し、ビールの世界を盛り上げています。

ただ、数字上、日本のビール消費のほとんどを占めているのはアサヒビール、キリンビール、サントリービール、サッポロビールの4大メーカーの製品です。シェアは99%で、黒ビールもありますが、そのほとんどがピルスナータイプのラガー(下面発酵)と呼ばれるスタイル。一方、クラフトビールの多くは上面発酵のエールと呼ばれるスタイルで果実風味を加えたものなど多種多様。一気に飲み干すにはもったいない香りとフレッシュな味わいが特徴です。

様々な味が楽しめるクラフトビール様々な味が楽しめるクラフトビール

ちょっとしたブームになっていることもあって、私もクラフトビールに興味があったのですが「なんとなく難しそう」と思ったのはまさにここ。ピルスナーやラガーといったビールの種類は150種類以上もあるそうで、クラフトビールを飲むのは好きですが、ファンの方々のように知識がないので「難しい世界なのかな」と思っていました。

そんな先入観を払ってくれたのが、今回ご紹介する福島県で米作りとクラフトビール醸造の二刀流を実践する、カトウファームの加藤絵美さんです。

米農家がビール醸造家に

私が、加藤さんに初めて会ったのは彼女が「米農家」と名乗っていた4年前でした。とても明るく愛らしい彼女にひかれ、その後、福島県までお話を聞きに行きました。

福島市内にあるカトウファームは、福島県のオリジナル品種「天のつぶ」を生産している米農家です。

加藤絵美さん(左)と夫の晃司さん加藤絵美さん(左)と夫の晃司さん

高校1年生からバンドを組んで活動していた加藤さんは、卒業後に上京、音楽で生きていく夢を追いました。その後、地元の福島市に戻り、営業職の仕事につきましたが、売り上げを求められる毎日に疲れを感じることも。その頃出会った夫の晃司さんの祖父が米農家ということもあり、2009年に就農。夫婦で一から稲作を覚え、農業を営んでいます。

「このあたりは、吾妻山の豊かな水と寒暖差のおかげで、本当においしいお米ができるんです。でも、水はけが良すぎて会津などの名産地よりは収量が落ちるという面もあります。このところ米作りを断念する農家さんもいるので、その人たちの土地を引き継ぐことで、年々作付面積は増えています。ただ、米の価格も下がっているので、米だけに頼らない農業をしなければ」と真剣な表情で語っていたのが印象的でした。

その後、カトウファームは米だけではなく、とうもろこしやねぎなどの野菜作りの比率も増やしたそう。そうした試みを続ける中で、クラフトビールの醸造所「Yellow Beer Works」をオープンさせることになるのです。

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